擦り傷はもう乾かさない
2018/09/01
こんにちは。
大阪は、心斎橋、本町、新町近く、西区は北堀江にあるパーソナルトレーニング・ファンクショナルトレーニング・コンディショニングジム、AWAKES (アウェイクス)の高嶋です。
今回は、スポーツ現場や家庭で使える知識をご紹介したいと思います。
スポーツをされている方、部活動をされているお子さまのいる家庭で頻繁に経験されていることの一つとして、擦り傷があるのではないでしょうか?
この擦り傷を治すために、乾かして瘡蓋(かさぶた)にして治していませんか?
実は、擦り傷を早くきれいに治すためには、湿った状態を維持する方法が優れています。
この擦り傷、すなわち創傷治療を促進させるためには閉鎖環境が重要である事が1960年代にWinter博士によって報告されており、その後、傷が治るメカニズムの解明が進み、現在では「傷を消毒せず、乾燥させない」湿潤療法が推奨されるようになっています。
しかし、この湿潤療法は今日でも必ずしも社会一般に浸透しているとは言えないのが現状です。
湿潤療法はうるおい療法とも言われ、体が本来持っている力「自己治癒能力」を最大限に生かす治療法です。
では、なぜ、傷を乾かさないのか。
それは、生きている細胞は乾燥すると破壊され治ろうとする自己治癒能力を低下させます。
傷が乾燥し瘡蓋のようになると、一見、治ったかのように見えますが、実際は傷の治りを遅らせていることになります。
従来の創傷治療は「創面を消毒し、ガーゼなどで乾燥させる」ことでした。
現在の創傷治療は湿潤療法で、体が本来持っている傷に対する自己治癒能力を最大限に引き出すために、その最大妨害因子である「乾燥」と「消毒」をさせない、しない事を大原則とし、加えて「創面に異物を残さない」、「浸出液を適度に調節する」ことが重要だとされています。
浸出液(じゅくじゅくした液状の分泌液)は、治ろうとする傷の細胞成長因子(サイトカイン)などを含み、浸出液を乾かさず有効利用することで治癒の促進するのが湿潤療法の原理であります。
また、なぜ消毒しないかというと、「消毒薬」には様々な種類がありますが、基本的にはタンパク質を変性することで細胞を傷害し、殺菌効力を発揮します。この細胞傷害作用は、細菌よりも細胞壁のない人体細胞に、より強力に作用することになるため、細胞成長因子を阻害し治癒の遅延に繋がることになります。
以上のことから、創傷治療にもっともよい方法は、
1.傷口を流水で洗い流し、異物を除去する
2.流血が止まらない場合は、ガーゼで圧迫し止血する
3.傷口を乾燥させないように、市販のハイドロコロイド素材の絆創膏を貼る
3(2).大きな傷は、ラップを傷より大きめに切って、ワセリンを塗りテープで密封する
4.化膿しないように浸出液が流れ出るようであれば完全ではなく適度にふき取る
これにより、湿潤療法として創傷は「早く」「痛くなく」「きれい」に治癒すことがわかっています。
また、体育館で転んだ時などに起こる軽度のやけどなども同様の湿潤療法が最適です。
深い切り傷や、中度以上のやけどなどは、湿潤療法が最適な治療とは限りませんので、必ず皮膚科などの専門医の診察を受けて下さい。
擦り傷の処置方法について、いかがでしたか?
また、これからも家庭やスポーツ現場で使える実践知識をご紹介していきます。
引用・参考文献:
安藤 喜郎. これからの正しい創傷治療ー湿潤療法の取り組みー. 逓信医学. Vol. 67 No.3 185-196 (2015)