コラム AWAKES COLUMN

ウェルネス時代へ

2019/06/08

大阪は心斎橋、本町、新町近く、大阪メトロ四ッ橋駅徒歩すぐ、西区北堀江にあるパーソナルトレーニング・ファンクショナルトレーニング特化型のコンディショニングジム、AWAKES (アウェイクス)の高嶋です。

早速ですが、今日は前回私のブログでお話ししたフィットネスの未来について、続きをお話ししたいと思います。

先日のブログで井ノ下トレーナーがスポーツの話題「ゴールデンスポーツイヤーズ」についてお話ししました。

そして、前回の私のブログでは「平成のフィットネス」と「新時代のフィットネス」と題して、フィットネス・ジム業界の歩みについて、そしてフィットネスのこれからのあり方についてお話ししました。

これらのブログでお伝えしたように、スポーツやフィットネス・エクササイズに関する人々の関心は高まっており、今後、益々注目を集めることは言うまでもありません。

このような中で、未来のスポーツ・フィットネスの役割は、健康と様々な社会問題を解決するものへと進化していくことがキーポイントとなることは間違いないでしょう。

そのためには、いわゆる「フィットネス業界」単体で考えるのではなく、包括的に社会問題や健康増進社会を考え、医療や福祉との連携をもっと緊密に深めていかなくてはなりません。

しかし、これまでの医療、スポーツ、フィットネス・ジムはそれぞれ縦割りの枠組みの中でバラバラに運用されており、「健康」という大きな枠組みとして考えられてこなかったため、多くの社会問題を抱えています。

この3つの分野(医療、スポーツ、フィットネス)は健康に密接に関連していますが、社会のルールや基盤を作る行政レベルでは統一性が持たれていないのが現状です。

縦割り行政の弊害

問題は、所管する監督省庁が違うこと、そして、横の繋がりや連携が取れていないことが大きな壁になっています。

それぞれの分野の所管先は、

医療・福祉 = 厚生労働省
スポーツ = 文部科学省(スポーツ庁)
フィットネス・ジム = 経済産業省

というようになっています。

この縦割り行政により、社会問題に対する取り組みを「健康」という包括的な概念で考えることができず、統一性が取れていないのです。

管轄省庁の違いによる様々な社会問題は数え切れないほどあります。

例えば、「マッサージ」。

駅ビルや商業施設などに入る「ほぐし」や「手揉み」などのボディケアのお店は、厳密にはマッサージではありません。
これらは、経済産業省管轄の「リラクゼーション業」というものに属します。

一方で、日本では「マッサージ」というのは、厚生労働省所管の国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」しか行うことができない業(仕事)であるという法律が存在します。

それなら、「ほぐし」や「手揉み」などのリラクゼーション業はいらないのでは、と思いますよね。
では、なぜ、リラクゼーション業というものができ、そして、今ではマッサージ業より普及したのでしょうか。

マッサージ業の特徴
厚生労働省による医療に準ずる行為として法律で定められている(縛りが厳しい)
国家資格を取得できる学校や定員が限定されている(施術者の絶対数が少ない)
国家資格を取得するためには、費用や時間がかかる
出店するために医療に準ずる法律上の様々な制約がある
あん摩マッサージ指圧師は法律上、看板や広告にその施術の価格の記載ができないなど、マーケティングがし難い

リラクゼーション業の特徴
経済産業省の分類する業種として認められている(業界の強い要求・ロビー活動があった?)
資格なしで誰もが業を営むことができ、短期でセラピストを輩出できる(安価に人材を確保できる)
医療法に準ずる「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師に関する法律(あはき法)」に基づく様々な規制の対象外であることから、一般の消費者に提供するサービス業として業を営むことができるという利点があり、すなわち、出店場所の自由度が高く、看板や広告に価格を表示できるなど集客が容易であること

というように、あはき法は厚生労働省がマッサージという施術を安全に提供するべくためにできた法律なのですが、これが返って障害となり、経済産業省が後にリラクゼーション業という業種に分類する「ほぐし」や「手揉み」というサービス業を認めたため、マッサージとリラクゼーションがグレー(曖昧)になり、一般の人にはわかり難い、このような複雑な現象が起こったのです。

これはごく一部ですが、このように省庁、行政の縦割りにより様々な障害があるのが今の日本です。

「健康」「ウェルネス(Wellness)」という概念で後述する今の社会問題を考えた時、このような縦割り行政は大きな壁となっているのです。

時代遅れの医療制度

現在、健康に関係するビジネスは多種多様です。
医療はもちろん、福祉・介護、食品(サプリメント、機能性補助食品)、運動、睡眠、メンタルヘルスなど、そして、れぞれの分野の中にも数多くのカテゴリーが存在しています。

今日の社会基盤の基準となっている健康に対する考え方は「対処療法による医療」です。

しかし、様々な社会情勢・動向・環境の変化によって、現代社会においてこれまでの概念で健康を扱うことが難しくなってきています。

日本の社会の現状を表すキーワードとして、

社会問題
人口減少・超高齢化・少子化
労働者人口減少・働き方改革
医療費削減・社会保障制度改革
格差社会

社会情勢
コト・体験型消費
訪日外国人増加・グローバル化拡大
スポーツ推進法・Tokyo2020オリンピック
健康とテクノロジー・大阪関西万博2025

健康寿命・健康増進社会
予防医療

AI・ビッグデータ・テクノロジー新世代
根拠に基づいた実践

このような社会問題・社会情勢の中でこれまでの対処療法による医療のあり方や無駄な支出を抱えた社会保障制度という枠組み(プラットフォーム)で前述の課題に取り組み、解決できるでしょうか。

現状の社会保障・国民皆保険制度が壁に

日本の健康社会問題を取り巻く環境の改善の大きな壁となっているのは、縦割り行政や医療制度だけではありません。
もう一つ大きな問題は社会保障制度です。
現在の日本の医療は社会保障である国民皆保険制度によって発展してきたと言っても間違いではありません。
日本の医療は対処療法に依存しています。
画像診断、処方せん(薬剤)、手術などの治療に対する医療費に莫大な財源が投じられています。

2018年度の医療費は過去最高の42.2兆円(前年度比1.5兆円増)、国民一人当たり33.3万円になるそうです。

国民が必要な医療を受ける権利を保障するという意味では、日本の社会保障は世界の中でも優れているのかもしれません。
しかし一方で、必要以上に処方せんを出したり、形式的に行われる検査や、根拠の乏しい治療など、多くの無駄な医療支出があることも事実です。
このことで日本の社会保障制度は財政圧迫を受け、他の社会問題に対する投資に悪影響を及ぼし、また国民の社会保障負担が増大していることもある意味事実です。

もし、病気や怪我を未然に防げたとしたら、それらの治療にかかる医療費が軽減されるのではないか。
そして、病気や怪我にならなければ心・メンタルの豊かさ、そして労働や社会生活への影響など、様々な精神的、肉体的、経済的な負担(コスト)や損失(ロス)を防ぐことができあらゆる場面でのプロダクティビティ(生産性)が上がるのではないでしょうか。


予防医学と運動との関係

何十年も前から「運動することは健康に良い影響を与える」ということはわかっています。
運動することは様々な病気や怪我の予防になることが様々な分野で研究され証明され続けています。

それにも関わらず、運動に対する社会の取り組み、とりわけ、行政の医療政策における社会基盤構築がほとんどなされていないのが現状です。

そして、そのことによって人々の運動に対する意識も低くなっているわけです。

現在の社会保障制度では対処療法に対する医療費の個人負担は1割から3割ですが、未然に予防するために行う医療や予防医学的運動といったものにかかる費用は全額自己負担というのが原則になっています。

例えば、肥満で運動をしないために膝の軟骨が磨り減り慢性痛になった人がいたとします。
その人に対して行われる検査、痛み止めの処方せん、手術となった場合の費用やリハビリの費用は全て保険が適応されます。

しかし、肥満にならないため、腰痛にならないために自身の健康診断で体組成を測ったり、姿勢や体の歪みを検査したり、ジムに通ったり、パーソナルトレーナーの運動指導を受けている人は、すべての費用を自己負担しなくてはいけません。

その他にも、接骨院(柔道整復師)による腰痛治療には保険が適用されますが、ジムでの腰痛にならないための予防運動にかかる費用は全て自己負担、というように、対処療法には個人の負担が少なく、予防行為・予防療法は個人負担になるというのが現在の日本の社会保障・健康保険制度なのです。

そうなれば、(支出だけで物事を考えた時)多くの人が自己負担の少ない方を選ぶことは自然です。

前述の通り、多くの人は運動と健康の関連性を知らないわけではありません。

しかし、自己負担で運動にお金をかけるよりも、小さな体調不良でも病院に行ったり、薬を処方してもらったりする方が安価に済む以上、もしそれが根拠の乏しい治療であっても対処療法に依存する方法を選び、積極的に運動に投資しようと思う人は限られてきます。
ですので、自己負担で運動指導(パーソナルトレーニングやフィットネスレッスン)や予防医療を積極的に利用する人は、健康に意識が高く積極的に投資しようと考えている人か、上部の中間層や一部の富裕層の投資できる人々に限られてきます。

「散りも積もれば山となる」ではありませんが、安価に病院へ行ったり治療を受けられる環境では、少し体調を崩す、腰がだるいといった比較的必要性の低い症状でも多くの人が対処療法的医療を受けるため、医療費が増大し、国の財政を圧迫するのです。


充実したコンテンツ

日本は、予防医学の分野では決して後進国ではありません。
健康に関連した研究はもちろん、商品やサービスといった一般の人が身近に利用できる物や施設、そして情報もたくさんあります。

(中には、科学的根拠の乏しい商品やサービスが横行しているという問題もありますが)

総体的に、日本では予防医学に基づいた情報、商品やサービスが充実しており、フィットネス分野では一般の人が運動を行えるジムや専門的な知識を持った運動指導者、パーソナルトレーナー、フィットネスインストラクターなど、決して施設も人材も不足しているわけではありません。

しかし、このコンテンツを活しきれていないのが日本の現状です。

その大きな理由は、社会のプラットフォーム(社会基盤)が現代の社会情勢や変化、ニーズに対応できていないからだと考えます。

どれだけ知識、良い施設やサービスなどのコンテンツを提供しようとしても、それを動かすことのできる環境が整っていなければ、そのコンテンツは全く役に立ちません。

どれだけ優秀なソフト(アプリ)でも、それを動かすハード(コンピューターやスマートフォン)が古くキャパシティオーバー(処理容量能力不足)ではなんの役にも立たないのと同じことです。

古いプラットフォームの上では、情報量の多い新しいコンテンツは運用することができず、優秀なソフトも活かすことができないのです。

デジタル(通信・IT・AI)の分野では目まぐるしくプラットフォームが進化する時代にあって、健康、福祉、医療分野での社会基盤の再構築は遅れていると言わざるを得なく、現在のままでは新しいコンテンツを生み出しても効率的・効果的に社会の役に立つことができないのです。

社会に求められている新しいコンテンツを運用するためには、これからの健康・医療・福祉・スポーツ・フィットネスを包括的に取り扱うことができるウェルネスのための新しいプラットホームの構築は急務で、それぞれの行政、省庁、自治体、業界、業種を越えた社会全体としての取り組みが必要なのです。

そのためには、政治や利権、業界団体間で小さなパイの奪い合いをしている場合ではなく、科学的根拠に基づいた理論の上で社会に必要な議論をし、本当に健康社会のために必要不可欠なプラットフォームの組み立て(制度設計、インフラシステムの構築)を行っていかなくてはならないのです。

すなわち、社会保障や社会保険制度の見直しや、医療・スポーツ・フィットネスの垣根を超えた包括的な健康・ウェルネスを基盤とした規制改革と緩和を実行していかなくてはならないのです。

時代と世界をリードする社会へ

未来のフィットネスの役割は、包括的に社会問題を考え、医療や福祉との連携をもっと深め、健康に関わる様々な社会問題を解決するものへと進化していくことがキーポイントとなるでしょう。

そのためには、プラットフォームのアップデートはもちろん、コンテンツとしてもより質を高めていく必要があり、予防医学的考え方をもっと積極的に取り入れ、科学的根拠に基づいたサービスや情報を広く認知してもらう、すなわち、国民の理解をどのように進めていくかに取り組む必要があります。

5年後、10年後、スポーツやフィットネス(運動すること)が人々にとって必要不可欠な生活必需品になることが求められています。

この、またとないゴールデンスポーツイヤーズや大阪関西万博2025を活かし、変革を起こす絶好の機会が今なのです。

世界でもトップクラスの超高齢化社会をどうするか、やり方次第で日本は世界をリードするチャンスがあります。

介護保険制度や後期高齢者医療制度など社会問題に対して対処療法型の医療改革は行われてきました。しかし、これらはこれまでの医療制度のマイナーチェンジといえるものです。
今はそうではなく、フルモデルチェンジによる予防医学、予防医療に基づいた制度設計、改革をする時期なのです。

医療・福祉(Health)、スポーツ、フィットネスが包括的な健康・ウェルネス(Wellness)として当たり前のようになるために、様々な分野と協力して未来のために発展していくために、できること、すべきことを行動に移していくのみです。

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